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ぱる通信〈PAL BULLETIN〉

食は人格!?

 この30年間、65キロ前後の体重を維持していたつもりだったけど、先日70キロ近くまで上昇していることに気づいた。最悪の健康診断結果シートを覗いてからは食い物にちょっとうるさくなっていたので、減ることはあっても、まさか増えるとは思わなかった。
 健康診断シートは「旨いものの食い過ぎ」だという。…そんな、まさか。身に覚えがない。毎日、納豆、豆腐に繊維質の多い野菜もの、脂は青魚から採る。おまけに苦手な酢の物まで克服したんだから…(酒をやらなきゃいいこととはわかってるけど)。
 人間の細胞は脳の一部を除いて100日かそこらですっかり入れ替わるという。ということは、何を食べるかによって次に形成される細胞の善し悪しが決まる、ともいえる(まさか1回や2回でガラッと新品に入れ替わるはずはないけど)。今食べているものが、次に入れ替わる自分を創るわけだから、食い物にはうるさくなっていい。
 書物によると、どうやら「油」と「塩」が成人病の元凶らしい。それさえ押さえておけばことさら神経質にならなくてもいいようだ。もちろん、食い過ぎは論外。
 おいしいものを心地よい環境で適量採る。これは人間として生まれてきたからこそできる最高に幸福なひととき。食事は寿命を決めるだけでなく、何を食べて生きているかは、その人の文化とも人格ともいえるもの。好きなものを採ってきた結果が今の身体なのだから、この現実(身体)を直視すると、まさしく「身体によくないものは旨いもの」だったことを実感する。
 だから粗食は美徳という気持ちも一方ではあるが、ほどほどならよかろう。せめて悪魔の健康診断シートになるような食い方だけは、よそうよ。(お前に言われたくはない?そう、余計なお世話だった。)
 興味深いのは、育ち盛りに何をどのように食って育ってきたかが、その人の人格形成(大袈裟?)に大きな影響を与えているという(これは戦時中に十代だった現在60代後半の人たちに共通した認識らしい)から恐ろしい。卑しい食生活をしてきたのは私も同様。いまさらだけど…(酒に対してはとくに)。
 この論拠は犬猫をみればわかるという。捨て猫を拾ってきてお上品に育てても、いつまでたってもガツガツが治らない。目の前にエサがあれば、いくらお腹がいっぱいでも食らい付く。どうせ食えないくせにテーブル中央の野菜サラダにまで手を伸ばして散らかすから始末が悪い。そうでない猫は、お腹がいっぱいになれば見向きもしないというのに…。遅蒔きながら品のない捨て猫を自分と重ね合わせて教訓にせねばと思う。そうそう、バイキング。ホテルの朝食。……余計なお世話か。
      *     *     *     *     *
 あの事件が起きたのは、凶作の年だった。イタチの夫婦には子どもが一人いて、一家三人、むつまじく暮らしていた。しかし、その年の秋は食い物に困っていた。夫イタチは毎日、餌探しに出かけるがいい獲物にありつけない日々が続いていた。
 そんなある日、妻イタチは近くの川で偶然3匹のどじょうを捕まえた。ちょっと大きいのが1匹と小さいのが2匹。夫イタチは今日も成果がないので帰りもついつい遅くなる。妻イタチはお腹のすかした子イタチに早く食べさせてあげたいが、なかなか夫が帰ってこない。子イタチがせがむので、しかたなく小さいどじょうを1匹ずつ母子で食べてしまう。そこに帰ってきた夫イタチ。
「あなた、今日どじょうを3匹捕まえたの。残しておいたから食べて!」久しぶりのごちそうを喜んでもらえると妻イタチは楽しみにしていたのだが…。夫の口から出た言葉は「お前たちだけたらふく食いやがって、オレにはこんな小さなどじょう1匹だけか!」
 そして…悲惨なことになってしまう。妻と子の腹は夫によって引き裂かれた。
 夫はその傍で半狂乱になって妻と子の名前を呼びながら詫び続ける。
「お前たちを信用してやれなかった私は大馬鹿野郎だ。食い物に惑わされるなんて…」
 引き裂かれたお腹の中からは、ほんとに小さなどじょうが1匹ずつ消化されずに残っていた。

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